2015.05.27
2015年5月27日
一般財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
食品衛生サポート部 課長 二ツ栁 裕隆
2012年12月に発足した第2次安倍内閣の成長戦略「アベノミクス:3本の矢」として、第3の矢(日本再興戦略)が放たれたことにより、今回のテーマである「厚生労働省が進めるHACCP導入型基準」の導入が、国内で広く浸透していくと考えられています。
また、ジャパンブランドとなる製品(食品・農林水産物)を輸出するための大きな柱として期待されています。
「HACCP」は食品の衛生管理のための国際標準であり、欧米を始め多くの国で導入が進んでいることから、「HACCP導入=安全性の証明」が製品を輸出する上での必須条件になりつつあります。
国内では平成10年にHACCP支援法が制定されていたが、中小企業における普及率は現在でも30%に満たず、導入が伸び悩んでいる状況下にありますが、「食品等事業者が実施すべき管理運営基準」が平成26年5月12日に改正されました。これにより、「現行基準(従来型基準):食品衛生法第50条第2項」と「HACCP導入型基準」との選択性にすることで、普及率の向上が期待されています。
従来型基準とは食品を取り扱う施設や設備を衛生的に保ち、食品の衛生的に取扱う等、すべての食品を対象とした全般的な管理を行うことで、食品の安全性を確保し、最終製品の抜き取り検査等により安全性の確保を行うものです。(表1)
HACCP導入型基準とは従来型基準に加え、原材料の受入れから最終製品の出荷までのすべての工程において、微生物による汚染、金属の混入などの潜在的な危害の予測(HA:危害要因分析)に基づいて、その危害の発生を防止するために、特に重要な工程(CCP:重要管理点)を継続的に監視・記録(モニタリング)していく「工程管理システム」です。(表2)
HACCP導入型基準の特長は、工程管理に重点を置くことで従来法型基準に比べ、より効果的に問題のある製品の出荷を未然に防止し、安全性の向上を図ることが可能になります。ただし、導入にはHACCPを行う班の編成に始まり、製品説明書の作成から実際の管理まで様々な専門的な知識を修得した上での管理が必要となります。(表3)
国内ではHACCPの義務化の国際的動向を踏まえ、HACCPの教育・研修のあり方やHACCP認証制度などHACCP支援のための検討が進められています。その中で当法人ではHACCPシステムの導入を検討されている企業に、その知識を修得するためのツールとして、HACCP講習会や衛生点検といった様々な場面での提案を行い、お役に立てるよう全力で取り組んでいます。すべての食品産業界が国際基準のHACCPを導入し、日本の食品の安全性を世界に発信する必要があるのではないでしょうか。