BLEIA法による糞便からのノロウイルス検査

2015.09.30

2015年9月30日
一般財団法人東京顕微鏡院
食と環境の科学センター臨床微生物検査部 高田 瞬

ノロウイルス食中毒の原因食品は牡蠣が多く、中腸線部に蓄積したウイルスに起因しています。また、弁当、寿司、調理パン等が原因となった場合はノロウイルスを保有した食品従事者を介し、食材がノロウイルスで汚染されたことが推察されています。ノロウイルスの食中毒事故を防ぐためには食品従事者は自身の健康状態を把握し、下痢や嘔吐などの症状がある場合は調理施設の責任者に速やかに報告が必要です。また、自覚症状のない食品従事者が原因となる事例も報告されていることから、ノロウイルスが流行する11月から4月の期間ではノロウイルスの定期検査を受けることが望ましいです。
 平成24年9月~平成27年5月の間に報道されたノロウイルス食中毒は941件あり、その中で食品従事者が感染源と思われた事例は492件(52.3%)でした(図1)。

食品従事者の糞便中のノロウイルス量は患者とほぼ同様に排泄されることから、手洗いなどがおろそかになり、食品や施設への二次汚染につながる恐れがあります。したがって、食品従事者のノロウイルス検査は食中毒事故を防ぐ有効な手段なのです。

1. 糞便からの検出法

 食品従事者のノロウイルス検査では大量の検体を感度が高くかつ迅速に結果が得られる方法が求められています。表1に示したように、核酸増幅検査は高感度で特異度も高いという長所があり、推奨されている検出法ですが、時間がかかるため多検体処理には向いていません。イムノクロマト法やELISA法を含む免疫学的検査は迅速で簡便ですが、核酸増幅検査に比べると、感度や特異性が落ちてしまうことが報告されています。

 栄研化学が開発し、販売されたBLEIA法(生物発光酵素免疫測定法)はホタルの発光現象を応用した方法で、高感度である特長がみられ核酸増幅検査と同等です。また、測定は全自動化され た装置で行うことから多量検体を少人数の技術者で実施できます。

2. BLEIA法と遺伝子検査の比較

 BLEIA法はRT-PCR法との相関性が高く、検査時間を大きく改善する方法です。表2で示したようにBLEIA法は当法人で受託しているRT-PCR法と検出感度が変わらないことが報告されています。また、当法人で行った遺伝子検査法との並行試験では感度が95.4%、特異度が98.6%、一致率が98.5%という結果が得られており、ほぼ同等の検出率を有していることが確認できています。測定時間においては、RT-PCR法に比べて大幅に早く結果を得ることができる迅速検査法であります。

3. BLEIA法のための新しい採便管

 図2はこれまでに採用していた採便管です。この容器は先端がさじのような形状をしており、適量の便を取りやすいつくりになっています。図3はBLEIA法のために開発された新採便管です。先端がスクリュー状の形をしており、便の中で回転させると適量を回収することができます。新採便容器はさじ型の採便管に比べ操作性が良く、衛生的に採便できるとのモニター結果も得られています。

 この容器の中には専用の調製液が入っているため、一定の糞便と調整液とが反応して、そのまま分析装置にかけることができるように考察された容器です。
 この新採便管を採用することによって、これまで手作業で実施していた抽出作業を自動化させることが可能になりました。抽出作業を自動化させることにより、さらに検査時間の短縮が見込めるようになり、コスト面においてもRT-PCR法より比較的安価で行うことができます。

 BLEIA法は大規模なノロウイルス検査にも対応可能な方法としてこれから広く普及していくと考えられます。

おわりに

 ノロウイルス食中毒は毎年250件以上の事件と約1万5千人の患者発生があり、対策としては手洗いの励行やトイレの整備が進められています。感染源対策としてはノロウイルス患者や不顕性患者を検査により発見し、食品との接触を回避する対策が重要であると考えられています。BLEIA法は食品従事者のノロウイルス検査法としてのメリットが高く、当法人でも導入を開始しています。

ご参考

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