遺伝子組換え食品のお話

2013.08.30

2013年8月30日
一般財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
豊海検査事業部 担当理事 安田和男

遺伝子組換え技術とは

動物や植物などのあらゆる生物は、細胞の中にDNA(デオキシリボ核酸)を持っています。DNAは、生物の形質や特徴を受け継いでいく役割を果たすタンパク質を作り出す遺伝子として働きます。

そこである生物の細胞から、その生物の有用な形質に関わる遺伝子を取り出し、他の生物の細胞に組み込みその有用な形質を持たせる技術を遺伝子組換え技術と言います。たとえば害虫に強い性質や除草剤に抵抗性を持つたせることで、農薬散布や草取りなどの農作業の軽減やコストの削減が図れるなどの有用性があります。さらに従来の品種改良の方法では、新たな品種を一つ作り出すのに作物同士を何世代も掛け合わせなければならず、十数年かかるものもありますが、遺伝子組換え技術を用いれば開発期間を大幅に減らせます。

遺伝子組換え食品の開発

遺伝子組換え技術が開発されたのは1970年代です。国際的には1980年代にかけて遺伝子組換えの実験や安全性に関するガイドラインが作成されました。2003年には、国際的に協力して生物の多様性の保全と利用による悪影響の発生防止を図るための「生物の多様性に関する条約のバイオセイフティに関するカルタヘナ議定書」が発効されました。我が国においても、研究開発分野、製造産業分野、農林水産分野では実験指針や製造指針、利用のための指針などを作成し、遺伝子組換え生物の適正な使用の確保が図られてきました。

2012年現在、遺伝子組換え作物栽培国は、米国、ブラジル、アルゼンチン、カナダ、インド、中国、パラグアイ、南アフリカ、パキスタンなど28カ国で、世界的な人口増加や耕地の砂漠化などの影響からその数は徐々に増加しています。主な遺伝子組換え作物であるダイズ、トウモロコシ、ナタネ及びワタにおける、世界での作付面積比率(図)を見ると、ダイズやワタでは遺伝子組換え作物が全作付面積の80%を超えています。

遺伝子組換え食品の安全性と食品表示

厚生労働省は、食品安全委員会による最新の科学的知見に基づく安全性審査の結果から、安全性に問題ない食品や食品添加物を公表しています。

安全性審査は、組み込んだ遺伝子からできたタンパク質が人にアレルギーを起こさないか、有害物質を作る可能性はないか、主要食品成分の割合は既存の食品と同程度かなどをポイントに総合的に評価しています。

日本で安全性が確認され、販売・流通が認められているのは、食品8作物(254品種)、食品添加物7種類(16品目)(2013.7.19現在)です(表)。

これら食品の主な用途は製油用、飼料用、加工食品用などです。そのため原料を米国からの輸入品に頼っている食用油、豆腐、しょうゆ、フライドポテト、ポテトチップスなどのスナック菓子などは組換え食品である可能性が高いと思われます。

食品衛生法では遺伝子組換え技術を用いて作られた原料作物及びその加工食品の表示については、分別生産流通管理(組換え技術を応用して生産された作物と、そうでない非組換え作物を生産、流通、加工の各段階で確実に分別する管理をいう)されているものは、「遺伝子組換え」などの表示をする義務があります。また、組換え、非組み換えの分別が明確になされていない場合は、「遺伝子組換え不分別」などの表示をする義務があります。

最新情報の正しい理解

我が国では、遺伝子組換え作物に対しては、遺伝子を操作するという言葉の印象から拒否反応を示す消費者もいます。また、組み込んだ殺虫成分に対して耐性を持つようになった害虫や、除草剤で枯れない強い雑草が現れているとの情報もあります。平成23年12月には、安全性審査を経ずに遺伝子組換え微生物を利用して製造された添加物が輸入され、国内で販売されたこともあります。

遺伝子組み換え食品の安全性は重要な課題であり、そのためにも私達は食品安全委員会や厚生労働省、農林水産省から提供される健康や環境に対する最新の情報に関心を持って、正しい理解をすることが必要であると思います。

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