2012.04.27
2012年4月27日
財団法人 東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
食品微生物検査部 部長 難波豊彦
梅雨そして夏と高温多湿の季節が始まります。この時期の室内環境の悩みといえばカビの発生がそのひとつではないでしょうか。風通しが良い昔の住宅と違い、気密性が高い近年の住宅は快適な生活ができる一方、温暖で湿度も比較的高いことに加え換気が不足しがちで、カビの発育に適する環境となります。特に高温多湿になる浴室・台所や洗濯機、栄養分が多く通気性が悪い冷蔵庫や押入れ、ハウスダストがたまりやすい畳・じゅうたんやエアコンなどはカビの汚染に注意が必要です。
室内から見つかるカビはクラドスポリウム属、アスペルギルス属、ペニシリウム属の3つが大半を占めます。これらの汚染は基材を劣化させたり、アレルギーの原因になることがあります。なかでもアスペルギルス属は病原性を持つ種が複数存在し、医学上重要なカビです。室内空気環境のカビ汚染がもたらすヒトへの健康被害は感染症やアレルギーが主であると考えられてきましたが、最近ではカビ毒(マイコトキシン)を産生する菌種が含まれることが報告され、関心がもたれています。
カビが発育するためには栄養、温度、水分、酸素などの環境条件がそろっていなければいけません。生育に最適な環境は温度25℃前後、相対湿度80%以上といわれます。気密性が高い住宅はこれらの条件を満たしていると考えられます。
カビの被害を防ぐ有効な手段は次の2点です。
室内ではホコリ、手あか、食べ物の汚れなどがカビの栄養源となります。これらを除き室内を清潔に保つことが大切です。押入れや畳・じゅうたんの下など普段目の届かないところの清掃が大切です。
室内の空気が多湿になるとカビの発生原因になる結露ができ易くなります。浴室、台所、洗面所などの換気を十分に行い、湿気を除くことによりカビが発育しにくくなります。空気が滞らないよう家具と壁の隙間を多めにとるなど通気にも心がけて下さい。
なお、すでにカビが生えている場合には、その部分を除去し、アルコールや市販のカビ取り剤などで殺菌してから修繕します。しかし、温度や湿度などの環境を変えない限り、再発の可能性は大きいと思ってください。カビが発育しやすいような環境は、他の有害な細菌や生物が存在する確率も高い可能性があります。アレルギー源でよく知られるダニは、カビを餌にすることもあります。これらの害を防ぐために、正しい知識を持って室内環境の管理を行うことが大切です。