第33回 日本食品微生物学会総会

第33回 日本食品微生物学会学術総会

日程

平成24年10月25日(木)~26日(金)

会場

アクロス福岡
(福岡市中央区天神1-1-1)

内容

< ランチョンセミナー >
国内外における腸管出血性大腸菌食中毒の動向と課題及び検査法
講演者:財団法人東京顕微鏡院 理事 伊藤 武

10月25日(木)12時00分、当法人の伊藤武理事が「国内外における腸管出血性大腸菌食中毒の動向と課題及び検査法」と題して講演を行いました。

この講演では、まず東日本大震災の被害と福島第一原発事故による教訓から、リスク対策の重要性をについて触れ、食品事故に置き換えて論じ、リスク評価による防止体制の必要性が述べられました。
特に、マニュアルも有用だが社員教育と人材育成が非常に重要であり、何よりも、安全な食品を提供するという道徳観をもって取り組むことが大切、と結びました。

平成24年8月に北海道の高齢者施設で、O157に汚染された白菜の浅漬けによって169名以上が感染し、8名が死亡するなど、腸管出血性大腸菌による事件が注目を集める中、約200名が熱心に聴講しました。

冒頭ではまず、O157をはじめとする腸管出血性大腸菌の特徴として、他の病原大腸菌と比較して食中毒症状が重症化しやすい点が紹介されました。そしてO157をもっとも保有するのは牛、中でも黒毛和種であり、5~10月(とくに夏季)の検出率が顕著であること、日本全国の農場にいる牛のうち、約28% がO157を保有していることが述べられました。

また、O157食中毒の原因食品として牛レバー、焼肉、ユッケに加えて浅漬についても言及があり、平成24年8月の北海道の白菜の浅漬け事例のほか、14年6月の福岡県、13年8月の埼玉県・東京都、12年6月の埼玉県における事例が紹介されました。

浅漬けによるO157食中毒については、

(1)汚染源の解明(野菜など農産物の汚染、従業者の保菌、工場内環境の汚染が考えられる)が必要であり、十分に行われなければ発生が繰り返される
(2)原材料の野菜の洗浄・消毒もきちんとされていなかった可能性がある
(3)浅漬け中で増殖した可能性も考えられる
(4)平成24年10月12日に施行された漬物の衛生規範改正(10℃以下での保存や消毒の義務付け)

の内容について述べ、衛生管理の重要さを訴えました。

さらに、O157以外の腸管出血性大腸菌(NonO157)についても詳しい解説があり、O26、O121、O111、O145、O91、O103がそれぞれ幼稚園、焼肉店、ホテル、病院、高齢者施設などで食中毒を発生させた経緯とともに、人から人の感染経路が疑われていることが述べられました。米・豪・独・欧州の事例紹介時にもNonO157による感染症の増加が目立つことを挙げ、今後も動向を注視する必要性を指摘しました。

最後にO157およびNonO157を制御するための課題として、

(1)牛飼育農場における対策(確実な対策は世界各国のどこにもなく、今後の課題)
(2)野菜・果物などの生産段階での管理
(3)と畜場の衛生管理:腸管の結紮など、と体への汚染防止向上
(4)食品工場の衛生管理:HACCP等の推進
(5)集団給食施設、レストランなどでの対策、加熱対策、汚染防止対策の推進
(6)輸入牛肉の監視と検査
(7)ドイツで発生したO104:H4の継続した監視

の7つを挙げ、講演を締めくくりました。

質疑応答では、生食のない海外で発生している食中毒の動向や検査法についてなど、活発な質問が寄せられ、受講者の強い関心を示していました。

参考:漬物による腸管出血性大腸菌O157食中毒と課題について


本総会では、当法人 調査研究室の和田真太郎主任が3つの講演の座長を務め、調査研究室の森 哲也主任、食品微生物検査部の鎌田有希主任、微生物検査部の馬場洋一さんがそれぞれ発表を行いました。

森主任の発表
「クオリバックスTMシステムを用いた腸管出血性大腸菌の検出」
鎌田主任の発表 「市販鶏卵のサルモネラ(SE)に対する 卵黄の菌体及び鞭毛抗体の保有調査と その解析の試み」
馬場さんの発表 「食品従事者糞便からのPCR法による 腸管系病原菌検査の検討」

【 当法人関連の研究と発表 】

ランチョンセミナー3
株式会社GSI クレオス  デュポン株式会社

日時:10 月25 日(木)12 時00 分〜13 時00 分 D 会場(4 階国際会議場)
演題:国内外における腸管出血性大腸菌食中毒の動向と課題及び検査法
講演者:伊藤武(財団法人東京顕微鏡院食と環境の科学センター理事)

■■■ 一般演題 第1 日目 10 月25 日(木)

A 会場(1 階シンフォニーホール)

◆ 9:20~10:00 座長:川崎晋((独)農研機構食品総合研究所)

1A03 混合糞便直接PCR 法による食中毒3 菌種核酸検出のための基礎検討
○高岡直子1)馬場洋一2)林田瑞穗2),西村直行1)伊藤武2)
((株)島津製作所1)(財)東京顕微鏡院2)

1A04 食品従事者糞便からのPCR法による腸管系病原菌検査の検討
馬場洋一1)林田瑞穂1),高岡直子2),西村直行2)伊藤武1)
(財)東京顕微鏡院 食と環境の科学センター1),(株)島津製作所2)

◆10:00~10:40 座長:小澤一弘((株)中部衛生検査センター)

1A06 果物・野菜における食中毒菌多重検出キット“[TA10]PathogenicBacterial Multiplex PCR Detection System”の評価と前培養条件の検討
○川崎晋1)鄒碧珍2)難波豊彦2)有馬和英2),木内勲3)
上﨑(堀越)菜穂子4),川本伸一1)
((独)農研機構食品総合研究所1)(財)東京顕微鏡院2),株式会社ドール3)
 プリマハム株式会社4)

B 会場(地下2階イベントホールA)

◆10:30~11:20  座長:盛田隆行(日清オイリオグループ株式会社)

1B11 サルモネラ(SE)に対する卵黄内の菌体及び鞭毛特異抗体検出手法を用いたSE ワクチン接種及びSE汚染状況等疫学的解析のための基礎的研究
○大田博昭1)鎌田有希2),馬場栄一郎3)伊藤武2)
(CAF ラボラトリーズ1)東京顕微鏡院2),大阪府立大学3)

1B12 市販鶏卵のサルモネラ(SE)に対する卵黄の菌体及び鞭毛抗体の保有調査とその解析の試み
鎌田有希1)伊藤武1),馬場栄一郎2),大田博昭3)
財団法人東京顕微鏡院1),大阪府立大学2),株式会社シーエーエフラボラトリーズ3)

C 会場(地下2階イベントホールB)

◆9:50~10:20 座長:和田真太郎((財)東京顕微鏡院)

1C04〈MALDI-TOF-MS を用いた微生物同定法〉の評価
○中谷昭広,日夏智子(東洋紡バイオロジックス株式会社 敦賀事業所品質管理部)

1C05 市販鯨肉の細菌検査
○山口敬治1),池田徹也1),久保亜希子1),清水俊一1),大星真弓2),狩野利夫3)
(北海道立衛生研究所1),北海道釧路保健所2),北海道帯広保健所3)

1C06 食肉加工工場における油脂と微生物汚染に関する検討
○國分伸紘1),國武広一郎1),松浦潤一1),宮崎祥典1),盛田隆行1),岡部和彦1)
中島和英2),石﨑直人3),堂ヶ崎知格3)
(攝津製油株式会社1),株式会社東京食肉安全検査センター2),麻布大学 生命・環境科学部3)

■ 第2日目 10 月26 日(金)

B 会場(地下2階 イベントホールA)

◆9:10~9:50 座長:工藤由起子(国立医薬品食品衛生研究所)

2B03 クオリバックスTMシステムを用いた腸管出血性大腸菌の検出
森哲也1),畑ますみ2),為房園実2),藤原香代子2),渡辺晃正3)
岩出義人4)和田真太郎1)難波豊彦1)遠山一郎1),大熊周平5)
上橋健三6),小沼博隆7)伊藤武1)
財団法人東京顕微鏡院1),岡山県備前保健所2),財団法人岡山県健康づくり財団3)
 三重県保健環境研究所4),株式会社GSI クレオス5),デュポン株式会社6),東海大学7)

◆9:50~10:30 座長:西川禎一(大阪市立大学)

2B07 複数機関で実施した腸管出血性大腸菌O26,O111 およびO157 一斉試験法のための増菌培養法の検討
○小西典子1),齊木大1),大塚佳代子2)森哲也3),中川弘4),飯塚信二5)
多賀賢一郎6),甲斐明美1),小西良子7),工藤由起子7)

(東京都健安研センター1),埼玉県衛生研究所2)東京顕微鏡院3)
 BML フードサイエンス4),横浜検疫所5),神戸検疫所6),国立医薬品食品衛生研究所7)

2B08 腸管出血性大腸菌O26、O111 およびO157 の一斉試験法のコラボレイティブスタディによる評価(1)
○山本祐嗣1),林昭宏2),飯塚信二2),多賀賢一郎1),大塚佳代子3),小西典子4)
森哲也5),中川弘6),齊藤志保子7),磯部順子8),廣井みどり9),神吉政史10
右田雄二11,小西良子12,工藤由起子12
(神戸検疫所1),横浜検疫所2),埼玉県衛生研究所3),東京都健康安全研究センター4)
(財)東京顕微鏡院5),(株)BML フードサイエンス6),秋田県健康環境センター7)
富山県衛生研究所8),静岡県環境衛生科学研究所9),大阪府立公衆衛生研究所10
長崎県環境保健研究センター11,国立医薬品食品衛生研究所12

◆10:30~11:00  座長:山崎伸二(大阪府立大学大学院)

2B09  腸管出血性大腸菌O26、O111 およびO157 の一斉試験法のコラボレイティブスタディによる評価(2)
○大塚佳代子1),門脇奈津子1)森哲也2),高見明代3),中川弘3),林昭宏4)
上田泰史5),小西典子6),甲斐明美6),右田雄二7),神吉政史8),廣井みどり9)
磯部順子10,齊藤志保子11,小西良子12,工藤由起子12
(埼玉県衛生研究所1)(財)東京顕微鏡院2),(株)BML フードサイエンス3)
横浜検疫所4),神戸検疫所5),東京都健康安全研究センター6),長崎県環境保健研究センター7)
大阪府立公衆衛生研究所8),静岡県環境衛生科学研究所9),富山県衛生研究所10
秋田県健康環境センター11,国立医薬品食品衛生研究所12

◆11:00~11:30  座長:甲斐明美(東京都健康安全研究センター)

2B14  食鳥処理場におけるカンピロバクター交叉汚染の定量解析
○佐々木貴正1),春名美香1)森哲也2),村上真理子1),伊藤和夫1),山田友紀子1)
(農水省消費・安全局1)東京顕微鏡院2)

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