平成28年2月4日(木)、ベイサイドホテル・アジュール竹芝にて「遠山椿吉記念 第4回 健康予防医療賞 授賞式」が開催されました。
「遠山椿吉賞」は、当法人の創業者で初代院長である医学博士、遠山椿吉の公衆衛生向上と予防医療の分野における業績を記念し、その生誕150年、没後80年である 平成20年度に創設した顕彰制度です。公衆衛生の領域において、ひとびとの危険を除き、命を守るために、先駆的かつグローバルな視点で優秀な業績をあげた 個人または研究グループを表彰するものと位置づけています。本年度は、「遠山椿吉記念 第4回 健康予防医療賞」を選考顕彰いたします。
新たに設けられた「山田和江賞」は、50歳未満(年齢は応募時点)の応募者を対象とし、優秀な研究成果をあげており、これからの可能性が期待できる個人または研究グループに、研究の更なる発展を奨励することを目的として表彰するものです。平成26年に亡くなられた故山田和江名誉理事長・医師の50余年の功績を記念し、平成27年度に創設されました。
平成27年度は「健康予防医療賞」において、将来の予防医療のテーマに先見的に着手したものを重点課題としました。
「遠山椿吉記念 第4回 健康予防医療賞」は、「地域住民コホートにおける糖尿病の大規模疫学研究―糖尿病の実態把握とリスクアセスメントによる予防指針確立のための調査・解析―」という研究テーマで野田光彦氏(埼玉医科大学 内分泌・糖尿病内科教授、国立国際医療研究センター 糖尿病研究部長(応募当時)が受賞されました。
また、「遠山椿吉記念 第4回 健康予防医療賞 山田和江賞」として「本邦への小児細菌性髄膜炎予防ワクチンの導入と普及に関する研究」をテーマとした石和田稔彦氏(千葉大学真菌医学研究センター(感染症制御分野)准教授)が選ばれました。
授賞式ではまず、当法人の高橋利之副理事長・公益事業担当理事が開式を行い、選考委員長の宮坂信之氏(東京医科歯科大学 名誉教授、元 東京医科歯科大学 医学部付属病院長)により、選考の経緯および講評が述べられました。
次に主催者を代表して、当医療法人の高築勝義名誉所長が登壇し、まず、この顕彰制度が、遠山博士から連綿と続くわが両法人の生き方でございます、と述べ、125年に及ぶ創業以来の一貫した姿勢を示しました。
高築名誉所長は、野田氏のご研究について、「日本の国民病ともいわれる糖尿病のコホート研究を一貫して続けられ、一人でも糖尿病患者さんを少なく、合併症を少なくということで、日本の医療経済において、また、予防医学に非常に重要な仕事をなされた」とその功績を称えました。
石和田氏のご研究については、インフルエンザ菌b型(Hib)と肺炎球菌は、こどもの細菌性髄膜炎の原因になることから世界でワクチンによる予防が行われているが、日本が遅れをとっていたことにふれ、予防接種でカバーできる対策を向上させてこられたことに深い敬意を表しました。
「少子化の時代、子どもは宝です、みんな健康に成育していっていただきたい。これは我々国民全体の念願である」、「両先生方のご業績は非常に有意義で素晴らしい仕事であり、今後ますますのご活躍を祈念いたします」と結び、選考の労をいただいた宮坂信之先生をはじめ、6名の選考委員の先生方に心からの敬意を捧げました。
高築名誉所長による祝辞の後、来賓として、国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長の津金昌一郎氏、続いて公益社団法人日本小児科学会会長の五十嵐隆氏が祝辞を述べられ、それに応えて野田氏、石和田氏からそれぞれ、受賞についての挨拶をいただき、授賞式は終了しました。
続いて行われた野田氏、石和田氏による受賞記念講演会には、100名近い参列者が熱心に聴き入りました。
記念講演会終了後、会場を変えて行われた受賞記念レセプションでは、選考委員のご紹介ならびに来賓として千葉大学大学院医学研究院小児病態学教授の下条直樹氏が祝辞を述べられ、及川 孝光当医療法人統括所長が挨拶し、乾杯が行われました。参加者は大いに交流を深め、レセプションは盛況のうちに終了しました。
選考委員長講評より
宮坂 信之(東京医科歯科大学 名誉教授、元 東京医科歯科大学 医学部付属病院長)
授賞式来賓祝辞より
津金 昌一郎(国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長)
五十嵐 隆(公益社団法人日本小児科学会 会長)
受賞者あいさつより
遠山椿吉記念 第4回 健康予防医療賞 受賞
野田 光彦(埼玉医科大学 内分泌・糖尿病内科教授、国立国際医療研究センター 糖尿病研究部長(応募当時))
石和田 稔彦(千葉大学 真菌医学研究センター(感染症制御分野)准教授)
レセプション来賓祝辞より
下条 直樹(千葉大学大学院 医学研究院 小児病態学 教授)
東京医科歯科大学 名誉教授、元 東京医科歯科大学 医学部附属病院長
遠山椿吉記念 第4回 健康予防医療賞の重点課題は、将来の予防医療のテーマに先見的に着手したものということで、その選考には、選考委員長の私を含めて6名の選考委員が当たりました。
今回の応募は、31件でした。この賞は遠山椿吉博士の生き方を尊重して、4点で評価を行い、総合的に審査するものです。まず第1点は公衆衛生への貢献度、第2点は公衆衛生向上を図る創造性、第3点は予防医療の実践、第4はこれからの人の育成、この4点です。
まず、遠山椿吉賞の選考ですが、非常にレベルが高く、慎重に審議をした結果、最終的には野田光彦先生に決定しました。
野田先生の「地域住民コホートにおける糖尿病の大規模疫学研究」は、副題は「糖尿病の実態把握とリスクアセスメントによる予防指針確立のための調査・解析」となっています。主任研究者を津金昌一郎国立がん研究センター がん予防・検診研究センター長が務めた、多目的コホート研究、Japan Public Health Center-based prospective Study(JPHC研究)で野田光彦先生が中心に行われた、3万人の糖尿病調査の研究成果が対象です。
この論文の成績は、国際糖尿病連合の第7次Diabetes Atlasに日本からのデータとして掲載予定ですが、空腹時血糖と糖尿病発症率との関係を明らかにしたことなどは特筆に値すると思います。また、曝露因子としての糖尿病の実態把握において、糖尿病やインスリン抵抗性や、死亡、心血管病変との関係を明確にしたことも高く評価されると思います。
さらに、日本糖尿病学会による糖尿病診療ガイドラインにこの研究成果は引用されており、わが国の糖尿病の予防指針の確立に多大な貢献をしたことが明らかです。
野田光彦先生は、昭和59年に東京大学医学部をご卒業になり、自治医大、東大病院、虎の門病院を経て、平成17年から国立国際医療センター病院部長、22年からは同研究所糖尿病研究部長、糖尿病情報センター長を務められ、さらに現在は埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科の教授も併任とお聞きしております。以上が遠山椿吉賞の選考です。
次に山田和江賞ですが、本賞は優秀な研究成果を上げており、これからの可能性が期待できる50歳未満の応募者に対して、研究のさらなる発展を奨励することを目的とした顕彰制度です。本賞の選考では、石和田稔彦先生が最高得点を獲得されました。
研究テーマは「本邦への小児細菌性髄膜炎予防ワクチンの導入と普及に関する研究」です。ご存じのように細菌性髄膜炎とは、小児感染症の中では最も重篤な感染症であり、予後不良例が約3割認められることも既に明らかにされています。この細菌性髄膜炎の予防には、インフルエンザ菌b型ワクチン(Hibワクチン)、肺炎球菌に対しては、肺炎球菌結合型ワクチンの有効性が世界的に示されていますが、わが国の小児への導入は非常に遅れていました。
石和田先生は、千葉県での調査を中心的に行い、人口を基にした細菌性髄膜炎の罹患率調査を経時的に行い、さらに髄膜炎症例から分離された細菌の血清型の検査、さらにHib及び肺炎球菌の特異抗体の測定などを同時に行いました。その結果、Hibワクチンあるいは肺炎球菌ワクチンの接種により、インフルエンザ菌及び肺炎球菌による髄膜炎がわが国では劇的に減少をしたということです。しかも、そのワクチンに含まれる血清型による髄膜炎が非常に激減をしている、すなわちワクチンの効果が上がったことが明らかになりました。この成果は、わが国における同ワクチンの定期接種の重要性とその継続の必要性を示す具体的なエビデンスを創出された点において、称賛に値すべき業績であると思います。
石和田稔彦先生は、平成10年に千葉大学医学部をご卒業後、千葉大学小児科助手、講師、現在は同大学の真菌医学研究センター感染症制御分野准教授を務めておられます。
以上が第4回健康予防医療賞、遠山椿吉賞、山田和江賞の選考の概略です。受賞者の方々におかれましては、誠におめでとうございます。
こころとからだの元氣プラザ 名誉所長
野田光彦先生ならびに石和田稔彦先生、おめでとうございます。
正直に申しまして、この顕彰制度について、われわれは、どこからの援助も受けておりません。その点では、われわれが自らの手で研究者の支援をさせていただくのは、遠山博士から連綿と続くわが両法人の生き方でございます。その意味で、この方針はいつまでも続くものと思っております。
野田先生は、日本の国民病ともいわれる糖尿病のコホート研究を一貫して続けられました。空腹時血糖、その後の糖尿病の発症の解明に尽力されていると承っております。先生のご功績は、1人でも糖尿病患者さんを少なく、合併症を少なくということで、日本の医療経済において、また、予防医学にとって非常に重要な仕事をなされたと考えております。
石和田稔彦先生は、見るからに優しい小児科の先生であられます。インフルエンザ菌b型(Hib)と肺炎球菌のワクチンのご研究ですが、この2つの細菌が細菌性髄膜炎の原因になることが判っており、世界各国で既にワクチンによる予防は行われているのに、なぜか日本が後れをとっていたわけです。それを千葉県を中心にした研究から、日本全国に広めて国を動かしました。肺炎球菌の血清型が多数ある中で、予防接種でカバーできる対策を向上させてこられたのは、まさしく石和田先生のご功績だと思います。
先ほどお話の通り、この賞に名をいただいた、故山田和江先生は、両法人の中興の祖の1人です。各人に非常に優しく、特にお子さんに優しかったのは印象に残っております。今回の石和田先生の受賞を、泉下からたいへんお喜びになっているかと思います。
少子化の時代、子供は宝です。ひとりひとりを大切にし、みんな健康に成育していっていただきたい、というのはわれわれ国民全体の念願だと思います。
両先生のご業績は非常に有意義で素晴らしい仕事であり、今後ますますのご活躍を祈念しております。最後になりますが、選考の労をいただいた宮坂信之先生をはじめ、6名の選考委員の先生方には、大変ご苦労をお掛けしたと思いますが、本当にありがとうございました。
国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長
野田光彦先生の遠山椿吉記念、第4回健康予防医療賞受賞をお祝いして、一言ご挨拶を申し上げます。
なぜ、われわれの多目的コホート研究(平成元年から全国11地域、約14万人対象)に糖尿病研究が入ってきたかについて、少しお話しいたします。平成9年に初めて実施された糖尿病実態調査(後に国民健康・栄養調査に統合)において、糖尿病はわが国の非常に重要な病気だと認識され、糖尿病のリスク要因とがんや循環器疾患のリスク要因としての糖尿病についてエビデンスをつくることとなりました。
翌年、平成10年から、厚生労働科学研究費の中で、門脇先生を班長として、「厚生労働省多目的コホート研究班との共同による糖尿病実態及び発症要因の研究」という研究タイトルで研究班が立ち上がり、3年ごとで4期、12年間厚労科研費のサポートを受け、最後の3年間は野田先生が班長を務められました。
その研究班では、当時若手の野田先生が中心的な役割を担い、多目的コホート研究参加者の約3万人について、ヘモグロビンA1cの測定と糖尿病関連の調査を行うと共に、糖尿病の自己申告の妥当性をカルテ等で調べるといった研究を多目的コホート研究の中の糖尿病研究として実施していただきました。
今日どうしても1つだけ申し上げたいことは、野田先生は収集されたデータを解析しただけではないということです。われわれ疫学研究者は、コホート研究でいろいろな地域、北は岩手から南は宮古島まで、ひたすら保健所とか市町村にお願いをして調査に協力していただくわけですが、野田先生は、そこから一緒にやってくださいました。臨床でご多忙な中、野田先生は北から南までほとんどの現地に行かれて、頭を下げてこうした調査ができるようにしたという、非常に地道な努力をされてきたことをぜひ今日は申し上げたいと思って、ここにやってまいりました。
その成果が実って、われわれの分野では、糖尿病ががんと密接な関係があることを、ある意味で世界に先駆けて論文として出すことができました。また、糖尿病のリスク要因や糖尿病のがんや循環疾患、そして寿命への影響についても数多くの成果が刊行されました。
今回、野田先生が受賞され、評価していただいたことを共同研究者としてとてもうれしく思っています。
最後に、私の所属は社会と健康研究センターに、この1月1日から変更しました。いわゆる公衆衛生研究部門のことで、英語ではCenter for Public Health Sciencesと称します。がんだけ予防しても十分ではないので健康の維持・増進という観点が必須ですし、がん患者・サーバイバーも様々な病気を持ちながら社会において生活することになるので、「社会」と「健康」というキーワードはとても重要だと考えています。国民の皆さまがいつまでも健康でいられるため、がん患者・サーバイバーの方がより良く生きることをサポートするため、「社会と健康」をテーマとした様々な研究に取り組みたく考えていますので、野田先生、皆さま方のご支援をこれからも賜りたいと思っています。どうも本日は野田先生、おめでとうございました。
日本小児科学会 会長
野田光彦先生と石和田稔彦先生、受賞、誠におめでとうございます。私は石和田先生の応援団として本日ここに来ておりますが、野田先生の御業績につきましても大学に勤務しておりました頃から存じ上げております。
石和田先生が今回、第1回の山田和江賞を、しかも小児科の研究領域で戴けたことを、小児科学会の会長として大変喜んでおります。ご存じのように、65歳以上の方は今、日本で3400万人を超え、20歳未満の子供たちは2600万人でありこの傾向はますます顕著になります。子供のことを忘れないでくれたということは、大変ありがたいと思っています。
小児医療は医療の分野の中でも、最も予防が重要視されている分野です。はしかの予防接種をしないで子どもがはしかになれば、小児科医の仕事が増えます。子どもの健康のために予防できる感染症は予防しようとする姿勢は、小児科医の基本的姿勢であるアドボカシーに由来するものです。わが国の予防接種は最近の5年間で大分改善されましたが、現在でもアメリカの予防接種の3分の2程度のレベルです。
肺炎球菌とインフルエンザ菌b型(Hib)のワクチンは、最近導入されたワクチンの中の2つです。この2つの細菌は子どもの細菌性髄膜炎の原因菌であると共に、敗血症(痙攣を起こして子供が亡くなることもある)、股関節炎あるいは、難治性の中耳炎の原因にもなる菌です。この2つのワクチンの導入以来、細菌性髄膜炎、特にHibの細菌性髄膜炎はほとんど見なくなりました。肺炎球菌による髄膜炎患者も半数近くに減ってきています。
しかし、肺炎球菌は血清型が多数あり、予防接種でカバーできていない菌はこれからも残ります。その意味で肺炎球菌の血清型を調べて、それに基づいた予防接種対策を取ることができるという石和田先生の御業績は、基礎的なデータとして非常に重要かと思います。それをご評価いただいたことは、小児科医の仲間としてうれしく思っている次第です。
この賞がますます発展して、国民の健康増進に大きく寄与することを期待しております。本日は本当におめでとうございました。
埼玉医科大学 内分泌・糖尿病内科 教授
(国立国際医療研究センター 糖尿病研究部長(応募当時)
本日は栄えある遠山椿吉記念 第4回 健康予防医療賞を受賞させて頂く機会を頂戴いたしまして、心より深謝申し上げます。誠にありがとうございます。
思い起こしますと約20年前、1998年の初頭、米国コーネル大学での3年近い滞在から帰国いたしました直後に、糖尿病に関する疫学研究が始まるということで、お話を頂戴いたしましたことが、今回受賞させて頂きました研究に入るきっかけとなっております。自治医科大学の名誉教授でいらっしゃいます葛谷健先生から、東京大学の門脇孝先生にお声掛けがあり、門脇先生がその研究代表者をお務めになることとなりましたが、その際、米国から帰国して間もない私に研究事務局の任に当たるよう、門脇先生からお声掛けがございました。これが、その当時、インスリン分泌機構の研究を主にいたしておりました私の研究歴を、大きく変える契機となりました。以降、JPHC多目的コホート研究の先達の多くの先生方に導かれながら、各地域での調査や班会議などの会議に出席したり、糖尿病調査のお願いに参上いたしたりしましたことは、私にとってかけがえのない良い思い出です。
研究の開始から、3年間の厚生科学研究・厚生労働科学研究が都合3度、合わせて9年間に亘り研究事務局を仰せつかり、さらにその後の3年間、厚生労働科学研究の研究代表者も務めさせて頂きました。糖尿病の疫学研究を始めた当初は疫学の右も左も分からない状態で、それこそ教科書を読んで勉強した訳ですが、疫学研究の先達の先生方は快く私をご指導下さり、 私も、この研究が、それこそ日本の糖尿病の疫学研究の礎になる研究であるという使命感のもと、まさに雑巾掛けから始める勢いで、先輩の諸先生方にご迷惑を掛けないよう、現場での調査に、また、解析や論文発表にと、力を尽くしてまいったところでございます。とりわけ、国立がん研究センターの津金昌一郎先生には、今回、賞を賜りました研究フィールドでありますJPHCコホートの研究をその当時より長く引っ張ってこられましたお立場から、私をときに厳しく、あるいはときに温かくご指導下さっております。
研究の初期の頃は、現在岩手医科大学で講師をいたしております高橋義彦先生がともに携わって下さり、また、2002年にランセット誌にコーヒー摂取と2型糖尿病発症に関する論文が発表されました折には、現在三井記念病院に勤務されておられる五十川陽洋先生が、正月休みにも拘わらず、その当時高橋先生のアイデアで持ち合わせていたデータからcorrespondenceの作成に当たって下さり、首尾よく掲載されましたことなどは懐かしい思い出です。
私の主務が臨床でありますことから、共同研究者の先生方に叱咤激励を受けることも多々あった訳でございますが、溝上哲也先生が2006年に当時の国立国際医療センター研究所に赴任され、溝上先生や、溝上先生の教室の先生方とともに糖尿病に関わる解析や研究を行うようになり、随分と進捗いたしましたことは、この上ない慶びでして、溝上先生に心より感謝申し上げます次第です。また、その後、私自身も研究所の部長を併任するようになりまして、加藤昌之先生、後藤温先生、壁谷悠介先生がJPHC糖尿病研究の解析を進めて下さいました。衷心より深謝いたします。
糖尿病の分野では、疫学研究の先人でいらっしゃる先述の葛谷先生や、日頃親しくお言葉をお掛け下さっております東京慈恵会医科大学名誉教授の田嶼尚子先生、遠山椿吉記念 第3回 健康予防医療賞 特別賞を受賞していらっしゃいます伊藤千賀子先生をはじめ、多くの先輩がいらっしゃいます。この系譜に連なる研究分野に携わる研究者として、本賞の名に恥じぬよう、今後とも精進してまいりたいと存じます。
最後に、貴両法人の益々のご発展を祈念いたしまして、私の受賞の挨拶に代えさせて頂ければと存じます。誠にありがとうございました。
千葉大学 真菌医学研究センター(感染症制御分野) 准教授
このたびは、遠山椿吉記念第4回健康予防医療賞山田和江賞に選出いただき、大変光栄に存じます。選考委員の先生方をはじめ関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。
私が主治医としてはじめて受け持った細菌性髄膜炎の患者さんは、インフルエンザ菌b型(Hib)が原因の髄膜炎の乳児でした。幸い一命は取り留めたものの、両側の高度聴力障害を残しました。そのことがわかったときの、ご両親の落胆された姿が今でも脳裏に浮かびます。この時には、すでに海外ではHibワクチンが導入され劇的な予防効果が認められはじめていました。
その後、本邦へのHibワクチンと肺炎球菌結合型ワクチンの普及により、現在、小児の細菌性髄膜炎は激減しました。そして、この髄膜炎予防ワクチンの導入と普及に関する研究に、私自身が関われたことを大変誇りに思っています。この研究は、本日ご列席いただいている千葉大学小児科感染症グループの先輩方がその礎を築かれ、同僚や後輩たちと一緒に地道に継続して行ってきたことであります。本日のこの受賞の喜びを、一緒に研究を行ってきた仲間とわかちあいたいと思います。
また、この研究成果は、素晴らしいワクチンを開発してくださったメーカーの方々、行政機関の方々、全国で積極的に接種を行ってくださった医療機関の方々、また、子どもたちを医療機関に連れてきてくださった親御さんたちの協力なしではなし得ませんでした。そのことをお伝えしておきたいと思います。
これからも、未来ある子どもたちが、健康で元気に育っていける社会を作っていけるような研究を続けていきたいと考えております。
最後に、いつも私の傍で支え、励ましてくれる家族に心より感謝の意を表し、私の受賞のあいさつとさせていただきます。
本日はありがとうございました。
千葉大学大学院医学研究院、小児病態学教授
石和田先生、このたびは本当におめでとうございます。
来年2017年で千葉大学小児科教室は開講100年になりますが、久保教授の時からの歴史ある感染症グループにおいて、上原すゞ子先生から始まって連綿と続くこのような努力を石和田先生が集大成をされてこの賞に結び付いたことを、千葉大学小児科に在籍している者としてたいへんうれしく思っております。本日、感染グループの多くの若手の先生たちも来てくれていますので、本当によかったと感じております。
私自身は専門が免疫アレルギーですが、アレルギー発症予防の分野でも腸内細菌叢が非常に重要なことが明らかになり近年大きな話題となっています。さらに最近では、多くの生活習慣病の発症にも腸を含む細菌叢の関与がわかってきました。感染予防の点からは、ワクチンが非常に重要ですが、病原体の増殖を防いでいる正常細菌叢の研究も非常に重要なトピックスかと思います。正常細菌叢は宿主の免疫機能を調節する働きもあることがわかってきました。今後の発展が期待される領域です。
遠山椿吉先生の提唱された予防医学は、今、先制医療ともいわれるようになりましたが、臨床ならびに基礎医学のさまざまな領域の先生方が集まって研究を進めることが、今後の予防医学の発展にさらにつながると思います。
成人の各種疾患の萌芽は、実は小児期にあることがよく分かってきています。妊婦さん、あるいは妊娠する前の女性は非常に重要ですので、これから私たち小児科医がそのような領域で、産科・内科、基礎医学の方々とも手を携えて、研究していかなければいけないと、今日、石和田先生の受賞記念講演を聞いていて感じた次第です。
このたびは千葉大学小児科感染症グループの代表として石和田先生に賞をいただきましたこと、千葉大学ならびに小児科を代表して御礼を申し上げます。今後とも石和田先生、ますますのご発展に期待していきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
お問い合わせ
一般財団法人 東京顕微鏡院 公益事業室
〒102-8288 東京都千代田区九段南4-8-32
TEL:03-5210-6651 / FAX:03-5210-6671