遠山椿吉記念 第1回 食と環境の科学賞 授賞式

平成21年2月4日(水)、ホテルメトロポリタンエドモントにて「遠山椿吉記念 第1回 食と環境の科学賞 授賞式」が開催されました。

この賞は、当財団の創業者で初代院長である医学博士、遠山椿吉の公衆衛生向上と予防医療の分野における業績を記念し、その生誕150年、没後80年である平成20年度に創設した新しい顕彰制度です。

公衆衛生の領域において、ひとびとの危険を除き、命を守るために、先駆的かつグローバルな視点で優秀な業績をあげた個人または研究グループを表彰するものと位置づけています。遠山椿吉賞は「遠山椿吉記念 食と環境の科学賞」、「遠山椿吉記念 健康予防医療賞」の2部門あり、隔年で選考顕彰いたします。

「遠山椿吉記念 第1回 食と環境の科学賞」を
西尾 治氏(左)に授与。
右は当財団・医療法人の山田匡通理事長。

平成20年度は「食と環境の科学賞」において食品衛生と生活環境衛生、感染症対策を重点課題としました。

「遠山椿吉記念 第1回 食と環境の科学賞」は『ノロウイルスによる食中毒の発生要因の解明と予防策の樹立に関する研究』というテーマで西尾 治氏(国立感染症研究所 感染症情報センター客員研究員)が受賞しました。

また、選考委員会の推薦により設けられた「奨励賞」は『食品衛生微生物の簡易迅速検査法の開発と有効性の評価、食品衛生向上手法の開発』というテーマで川崎 晋氏((独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所研究員)が受賞しました。

「遠山椿吉記念 第1回 食と環境の科学賞 奨励賞」
を川崎 晋氏(左)に授与

「遠山椿吉記念 第1回 食と環境の科学賞 奨励賞」を川崎 晋氏(左)に授与。授賞式ではまず、当財団の山田洋輔公益事業担当理事・当医療法人副理事長が開式の辞を述べ、選考委員長の中村靖彦氏(東京農業大学客員教授)による講評と受賞者の紹介がありました。

続いて、当財団および医療法人の山田匡通理事長から西尾氏に「遠山椿吉記念 第1回 食と環境の科学賞」、川崎氏に「奨励賞」が授与されました。

山田匡通理事長は、「賞の創設に先立ち、内心若干の懸念もありましたが、本当にこのような立派な研究に遭遇したことを心から喜んでおります。」と述べ、「お二人の研究はグローバルな、まさにこれから将来性の極めて高い研究という印象を強く受けました。お二人がこれを機会にますます研究内容を深めて、公衆衛生と予防医療により一層貢献されることを祈念いたしまして祝辞とさせていただきます」と結びました。

祝辞を述べる山田匡通理事長

山田理事長による祝辞の後、さらに来賓として国立感染症研究所の渡邉治雄副所長が祝辞を述べ、それに応えて西尾氏と川崎氏からそれぞれ、受賞についての挨拶があり、授賞式は終了しました。

続いて行われた西尾氏、川崎氏による受賞記念講演会には、百名を超す参列者が熱心に聴き入りました。

西尾氏による記念講演 
川崎氏の記念講演

講演会終了後、会場を変えて行われた受賞記念レセプションでは、高橋利之当財団副理事長の挨拶に続き、当財団常務理事、「食と環境の科学センター」の伊藤武所長の音頭で乾杯が行われました。参加者は大いに交流を深め、レセプションは盛況のうちに終了しました。

 レセプション会場にて  
伊藤 武所長による乾杯の音頭

授賞式祝辞、受賞者あいさつ

開式の辞より

山田洋輔 当財団公益事業担当理事、医療法人副理事長
「近年、ますます、食・環境といった、いのちを取り巻く危険を未然に防ぐことが、その重要性を増してきております。百年以上前、創業者が伝染病の脅威に立ち向かった時代から、公衆衛生の分野では、科学を駆使して研究室で日々新たな課題にチャレンジしつつ、その成果を人びとの暮らしに生かすために普及啓発をはかることが肝要といわれます。遠山椿吉が、どのような生き方をし、どのような実践から数多くの実績を上げてきたのかについては、当法人発刊の冊子『遠山椿吉 魂の系譜』をご覧いただき、この賞の狙うところ、その意義についてご理解いただければ、誠に幸いです。」

授賞式来賓祝辞より

渡邉治雄 国立感染症研究所 副所長
「遠山椿吉先生のモットーは、実験室で行った成果を公衆衛生の現場で生かすことだとうかがいましたが、西尾先生の研究はまさしくそれを地でいった成果だと考えております。ノロウイルスが環境内で生息する実態を新しい技法を用いて明らかにした点で非常に優れていると同時に、各地方衛生研究所と国立感染症研究所をネットワークで結び、日本各地の実態も明らかにしたことが、この研究に広がりを与えました。川崎先生は、まだ若い研究者ですが、非常に目の付け所が適切で、食品等における微生物の汚染状況を測る方法論の開発にまい進して研究成果を上げておられます。東京顕微鏡院が、食と環境及び公衆衛生に対して貢献される方を、このような形で表彰する賞を設けられたことは、非常に現代の要請にかなった賞であると感じております。」

受賞者あいさつより

西尾 治先生
「われわれの研究は、本当に長年かかってこつこつと、数百、数千、あるいは万というデータを集めて、やっとものが言えるという、地道な研究であります。このような研究に光を当てていただいた選考委員の先生方に感謝いたしております。この受賞は、現在こつこつと研究されている研究者達に、希望を与え、新たに研究の意義を再認識して、これからも頑張っていただけるもの、と思っております。今回の受賞は私個人の名前になっておりますが、実質的にはいわゆるノロウイルス研究の西尾グループを代表して、私がいただいたものです。後日研究仲間とこの喜びを分かち合いたいと思います。私事ですが、もう一度公衆衛生という考えに基づき、食中毒、感染症の予防に微力ながら尽くしていきたいと思っておりますので、今後ともご指導ご鞭撻をお願いいたしまして、私の挨拶とさせていただきます。」

川崎 晋先生
「私は、現場にできるだけ適合する迅速検査手法を開発するという観点で研究し、その研究過程でいろいろな方々にお世話になりました。ポストドク*や任期付研究員という非常に不安定な立場にも関わらず、多数の方に御協力頂き、励まされたことが私の研究を安心して進める上で大きな励みとなりました。その研究成果をこのような場で認めていただけたことは、大変嬉しく思っております。幸い私は雇用期間の任期満了に伴い、今月当研究所の正規職員である主任研究員に着任しました。この栄えある賞をいただき、本当に恐れ多いと思いますが、本受賞をさらなる糧として、是非今後とも頑張らせていただきたいと思います。ありがとうございました。」  
* 博士号取得直後の数年契約の研究者

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