遠山椿吉記念 第8回 健康予防医療賞 受賞者発表

遠山椿吉記念 第8回 健康予防医療賞 受賞者発表

このたび、たいへん多くの優れた研究テーマが応募されました。選考委員会による厳正な審査にて授賞候補者を選出し、選考委員長同席のもと両法人合同の経営会議において慎重に議論を重ねた結果、栄えある第8回 健康予防医療賞の受賞者を決定いたしましたので、発表いたします。
今回は、本賞と山田和江賞のダブル授賞といたしました。

受賞された方々には、こころよりお祝い申し上げます。

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遠山椿吉記念
第8回 健康予防医療賞
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遠山椿吉記念 第8回 健康予防医療賞
山田 和江賞
受賞者
日本での新型コロナウイルス感染症と血栓症を調査するタスクフォース
(代表:山下 侑吾 / 京都大学大学院 医学研究科 循環器内科学)
 タスクフォースメンバー >>
テーマ名
日本での新型コロナウイルス感染症と血栓症の実態を調査し 最適な予防の指針を検討する研究

※ 遠山椿吉賞応募者のうち、優秀な研究成果をあげており、これからの可能性が期待できる40歳以下の方に対して、平成27年度に「山田和江賞」を創設しました。「山田和江賞」は、当法人が戦後10年間休止していた事業を再建し、平成26年に享年103で亡くなられた故山田和江名誉理事長・医師の50余年の功績を記念して創設されました。

研究成果の概要:遠山椿吉記念 第8回 健康予防医療賞

受賞者日本での新型コロナウイルス感染症と血栓症を調査するタスクフォース
(代表:山下 侑吾 / 京都大学大学院 医学研究科 循環器内科学)
テーマ名日本での新型コロナウイルス感染症と血栓症の実態を調査し 最適な予防の指針を検討する研究

背景

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2020年以降、世界中でパンデミックとなり、医療的のみならず社会的にも大きな問題となった。当初より、海外と日本では、発症数・重症化率・致死率など、様々な状況が異なっている可能性も示唆されたが、日本では公衆衛生的な視点からの疫学研究が乏しい状況であった。COVID-19に対する治療指針の検討は、主に海外からの報告を参考とされているが、それらの指針が日本人に於いても適切なのかは、疫学的調査が乏しかった状況に於いて、日本の現場の医療従事者にとっては喫緊の課題であった。

COVID-19は、ウイルスによる呼吸器感染症であり、呼吸不全がその主病態と考えられるが、一方で、その病態の悪化にも深く関与する重要な合併症として「血栓症」を併発する事が報告されていた。そのため、血栓症の発症を「予防」する薬剤の投与(抗凝固療法)の有用性が、海外より報告され、広く普及しつつあった。一方で、海外と異なる日本でのCOVID-19の感染状況、重症度や致死率の違いの原因として、病態の悪化にも寄与しうる血栓症のリスクが異なる事が一因である可能性も考えられた。

しかしながら、日本では、疫学的調査乏しかったため、日本でのCOVID-19に伴う血栓症の実態および、それに応じた最適な予防指針が不明な状況であった。そこで、血栓症の予防を目的とした実態を明らかにする疫学研究が早急に求められる状況であった。

調査・研究のねらい

日本では本テーマに関する疫学的報告がなかったため、本研究の主なねらいは、COVID-19の詳細な患者データを多数集積し、血栓症の実態を調査する事であった。さらに、それらの詳細な疫学データに基づき、最適な予防の指針を明らかにする事も目的であった。また、コロナ禍という特殊な環境での喫緊の課題であったため、迅速に研究を遂行する事が優先された。

調査・研究の成果

本取り組みは関連学会を母体としつつ有志による研究として実施された。まず2020年夏に緊急アンケート調査という形で日本の状況が簡易的に調査され、日本では血栓症の報告がかなり少なく、海外と日本が異なる実態である事が示唆され(Ann Vasc Dis. 2021)、そして血栓症の個別の症例の詳細が明らかとなった(Circ J. 2021)。

それらの結果を元にして、先行的な多施設研究が実施され、日本での血栓症の実態および予防の詳細が初めて明らかとなった(Circ J. 2021)。そして、日本での最適な予防指針を検討するために、さらに詳細かつ大規模な多施設研究(CLOT-COVID研究)が実施された(J Cardiol 2022)。

同研究からの知見は、様々な視点から学術論文としてまとめられ、計13報の論文報告が実施され、日本では血栓症の頻度が全体としては海外よりは少なかった、COVID-19の重症度が高い症例では血栓症のリスクが高かった、個々の症例にリスクに応じて抗凝固療法による予防を調整する事が妥当である事等が明らかとなった。

これらの知見は、関連学会からの診療指針という形まとめた上で現場に向けて情報発信され、厚生労働省による診療の手引きにも引用されるに至った。

日本での新型コロナウイルス感染症と血栓症を調査するタスクフォース

(順不同・敬称略)

愛知医科大学病院:丸山 優貴
福島県立医科大学:佐戸川 弘之(現、福島赤十字病院)
兵庫県立尼崎総合医療センター:西本 裕二(現、大阪急性期・総合医療センター)
北海道大学病院:辻野 一三、中村 順一
関西医科大学総合医療センター:坂下 英樹
横須賀市立うわまち病院:中田 弘子
京都大学医学部附属病院:奥野 善教、山下 侑吾
三重大学医学部附属病院:荻原 義人
JCHO東京新宿メディカルセンター:谷地 繊、竹山 誠
横浜南共済病院:孟 真、軽部 義久
東京慈恵会医科大学附属柏病院:戸谷 直樹
市立函館病院:新垣 正美
長崎大学病院:池田 聡司
浜松医療センター:山本 尚人、小林 隆夫
筑波メディカルセンター病院:相川 志都
桑名市総合医療センター:山田 典一
東邦大学医療センター大橋病院:池田 長生
大阪公立大学医学部附属病院:林 浩也
松江赤十字病院:石黒 眞吾
JCHO南海医療センター:岩田 英理子
東北大学病院:梅津 道久
四国こどもとおとなの医療センター:近藤朱音
福島第一病院:小川智弘

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