2012.08.31
2012年8月31日
財団法人 東京顕微鏡院 技術顧問
農学博士 瀬戸 博
シックハウス症候群というのは、新築あるいはリフォームした建物内の空気質が原因となって惹き起こされる様々な健康障害をいいます。1990年代に顕在化してマスコミなどで大きく取り上げられました。この病気に対する行政や業界の理解が深まり、対策も一定程度進んだため、国民生活センターに寄せられる相談件数も一時より減少しています。
一方、依然としてシックハウス・シックスクール事例がマスメディアで報道されているのも事実です。シックハウス問題はどうなっているのか、対策は現状のままで十分なのか、なぜ、シックハウスはなくならないのか等々、次々と疑問が生じてきます。毎日新聞の特集記事「消えないシックハウス」(2011年1月17日~19日)は、「シックハウスはもう終わった」と考えている人達に、注意を喚起するものとして非常に注目されました。
本講演では、シックハウス症候群の現状について、さまざまな側面から着目しました。
最初に、「最近のシックハウス問題の特徴」として、空気から化学物質を吸入することの危険性や最近の住宅では、建材や家具、家庭用品に多くの揮発性化学物質が使われていること、また気密性が高いため室内の化学物質濃度が高くなりやすく、シックハウス症候群にかかりやすいことを説明しました。
次に、「室内空気汚染の実例」では、シックハウスやシックスクールの事例を紹介し、教訓を学び、こうした事例の中から明らかになってきた「注目される未規制物質」をリストアップし、その特徴や健康影響を考えてみました。
また、厚生労働省が指針値を設定した物質の一つで、二日酔いの原因物質ともいわれるアセトアルデヒドと最近、オフィスビルなどで臭いが問題になっている2-エチル-1-ヘキサノールに焦点をあてて発生源・発生機構の解明にアプローチしました。
最後に「室内空気中化学物質の低減化対策」として、新築や改築の際の留意点、空気清浄機や吸収材、分解材など様々な技術開発を紹介しました(本講演は2012年6月30日(土)に開催されました)。