2013.03.01
2013年3月1日
財団法人 東京顕微鏡院 技術顧問
農学博士 瀬戸 博
抗原(アレルゲン)と接触することで、体内に抗体(IgE)が誘導され、ヒスタミンなどの生理活性物質が遊離され、様々な症状(発疹、痒み、ぜん息など)が引き起こされる状態です。
日本アレルギー学会の一般向け解説によれば、「アレルギー反応とはアレルゲンの持続的な暴露によりアレルゲンに対するIgE抗体産生が誘導され、アレルゲンの再暴露によりIgE抗体を介してマスト細胞や好塩基球からの脱顆粒反応を引き起こしヒスタミンやロイコトリエンなどの物質が遊離され様々な症状(皮膚、消化器、呼吸器など)が引き起こされる疾患です。
複数臓器、全身的にアレルギー反応が起こるようなケースをアナフィラキシーと呼び、ショック症状に至る場合もあります。」とされています。
「アレルギーマーチ」とは遺伝的にアレルギーになりやすい素質(アトピー素因)のある人が年齢を経るごとにアレルギー性疾患が次から次へと発症してくる様子を表した言葉です。室内環境のアレルゲンは、「気管支ぜん息」、「アレルギー性鼻炎」、「アレルギー性結膜炎」の原因となります。(保育所におけるアレルギー対応ガイドライン 厚生労働省 2013年3月より)
室内空気環境には様々なアレルゲンが存在します。アレルゲンになるものは、一般にたんぱく質です。主なものは、ダニ(虫体と糞)、カビ、家屋塵、昆虫(ゴキブリなど)、ペット(猫、犬など)の毛、フケなどです。また、外部から侵入したスギやヒノキの花粉もアレルゲンとなります。
空気中に浮遊しているこれらのアレルゲンを繰り返し吸入し続けることで、アレルギー状態になります。気管支ぜん息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎が主な症状です。ぜん息患児のアレルゲン陽性率はヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニに対してそれぞれ89%、家屋塵に対して84%というデータがあります。
ダニアレルゲンの検査はELISA法とグアニン量を測る方法に大別されます。ELISA法では、ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニの糞や虫体のアレルゲン量をそれぞれ測ることができます。素人でも扱える簡易なキットが市販されており、例えば「マイティーチェッカー」は、ダニ虫体を対象にスティックの色変化で判定し、学校環境衛生基準(1m2に100匹以下)に対して評価することができます。試料は、掃除機で吸引した家屋塵、寝具の塵埃が用いられます。(ELISA法:Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay法とは、サンプル中に含まれる微量の目的物質を、酵素標識した抗体または抗原を用い、抗原抗体反応を利用して定量的に検出する方法です。この方法の利点は、(1)高感度、定量性に優れ、(2)精製や前処理をほとんど必要とせず、(3)短時間で大量のサンプル処理ができることです。)
対策の基本は、ダニ、カビを増やさないことです。そのためには、湿度のコントロールと掃除機によるこまめな清掃が効果的です。家の中で空気が滞留しやすく、冷えやすいところ、例えば北側の部屋、洗面所、浴室はカビが生えやすいので特に注意して清掃と換気をよくしましょう。畳の上にカーペットを敷くとダニ、カビの絶好のすみかになります。
可能であれば、カーペットを洗浄し、乾燥させるとアレルゲンを減少させることができます。寝具を日に干すことは、ダニを殺すのには有効ですが、アレルゲンとしての作用が強いダニの糞が残っています。布団をたたきますと糞を細かくするだけで逆効果です。糞を除くには掃除機による吸引と洗濯が有効です。