米国食品医薬品局(FDA)による赤色3号の使用禁止について

2025.02.17

2025年2月17日
一般財団法人 東京顕微鏡院
理事・学術顧問 安田 和男

これまでの経緯

米国食品医薬品局(FDA)は2025年1月15日、食品と経口医薬品への赤色3号の使用許可を取り消すことを公表した。FDA規則では、食品製造業者は2027年1月15日、経口医薬品製造業者は2028年1月18日までに、赤色3号の使用を変更するよう指示している。

米国では赤色3号の認可について、1990年、市民団体などから暫定リストから恒久的リストへの収載が請願されていたが、FDAは発がん性が危惧される研究データの存在があったため、これまで判断を保留していた経緯がある。この研究では、動物実験において高濃度の赤色3号を摂取させた雄ラットに、甲状腺腫瘍が誘発される結果が報告されていた。

食用赤色3号化学構造式
C20H6I4Na2O5
分子量 879.86

なおFDAは、現在の赤色3号の使用量から考えて、「低い食事曝露レベルでヒトに甲状腺腫瘍を発症する可能性は低い」とするFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)の結論に同意すると述べている。
米国では1950年代に制定されたデラニー条項*1で、「食品に添加された化学物質がヒトまたは動物でがんを発生させることが確認された場合、その物質は食品添加物として認められない。たとえ動物実験が過酷な実験条件下で実施された場合であっても、がんの発生が見られたら認可されない」としている。
したがって今回の禁止措置は、安全性の問題ではなく、法律的に整合性をとったものと言える。 実際、FDAはデラニー条項に基づく法律問題として、赤色3号の使用を取り消す必要があると結論づけている。

赤色3号の使用状況

食品に着色料を添加する理由は、原料の色のばらつきや加工過程での変色に対し、色調を調整し、最終製品の色を一定に保つためである。それにより、食欲を増進させ、食生活を豊かにする役割も担う。

食用赤色3号は、耐熱性、耐還元性を有するため、焼き菓子や和菓子、発酵食品に利用されるほか、タンパク質への染着性が強いことから、かまぼこなどの魚肉練り製品にも利用される。近年は、天然由来色素への切り替えが進み、その使用は減少している。なお、カステラ、きなこ、魚肉漬物、鯨肉漬物、こんぶ類、しょう油、食肉、食肉漬物、スポンジケーキ、鮮魚介類、茶、のり類、マーマレード、豆類、みそ、めん類、野菜及びわかめ類等には使用が認められていない。これは、赤色3号により着色された場合、消費者が品質や鮮度等を誤認する虞があるためである。さらに食品の製造・加工工程で使用した場合は、食品パッケージに「着色料(赤3)」、「赤色3号」などの表示が義務づけられている。

国際的には、国際食品規格委員会(コーデックス委員会)が策定したコーデックス規格では砂糖漬け果実や食肉製品などに許可され、東南アジア諸国等コーデックス規格に準拠する多くの国で使用されている。
着色料をはじめ食品添加物の安全性は、国際的な安全性試験ガイドラインに準拠して、実験動物や培養細胞などを用いて発がん性試験、催奇形試験、抗原性試験、反復投与毒性試験などが行われ評価されている。

食用赤色3号の許容一日摂取量(ADI:人が一生涯摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量)は、JECFAにより、0~0.1mg/kg体重/日と設定されている。
厚生労働省は令和5年度のマーケットバスケット方式*2による調査において、日本人の一日当たりの食用赤色3号の推定摂取量は、ADIの0.048% (0.0005mg/kg体重/日)と非常に少ないことを報告している。検出された食品群は、魚介類・肉類・卵類の加工品のみであった。

今後について

今回の米国における赤色3号の使用禁止を受けて、消費者庁や食品関連業界、新聞などのマスメディアなどからQ&Aや関連情報が発信されている。消費者庁は、食用赤色3号については諸外国における動向を踏まえ、科学的な見地から使用について検討するとしている。
しかし米国の規制の強化の方向によっては、米国への食品輸出にも大きな影響を及ぼすことが考えられるため、他の化学物質も含めて今後の動向にも注意を払いたい。


*1 デラニー条項:
米国連邦食品医薬品化粧品法(The United States Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)に、1958年追加された条項

*2 マーケットバスケット方式:
食品添加物や農薬などを、実際に人がどの程度摂取しているか実態を把握するための調査方式である。スーパー等で市販されている商品を購入し、各食品中に含まれている食品添加物等の量を測定し、その結果に国民健康・栄養調査に基づく食品の喫食量を乗じて各物質の摂取量を推定する。


(参考資料)青字をクリックするとWebページまたはPDFが開きます

Color Additive Petition From Center for Science in the Public Interest, et al.; Request To Revoke Color Additive Listing for Use of FD&C Red No. 3 in Food and Ingested Drugs

・”FDA to Revoke Authorization for the Use of Red No. 3 in Food and Ingested Drugs“. FDA. January 15.2025

・消費者庁:「食用赤色3号のQ&A」2025年1月17日更新

・一般社団法人 日本食品添加物協会:「2025年1月15日付け、米国食品医薬品局(FDA)による食用赤色3号の使用許可取り消しの公表について

・厚生労働省、消費者庁:第10版食品添加物公定書 2024 D 成分規格・保存基準各条「食用赤色3号」

・食品安全委員会:食品安全関係情報詳細「欧州安全機関(EFSA)、食品添加物としてのエリスロシン(E 127)の再評価に関する科学的意見書を公表」2011年1月27日

・厚生労働省、消費者庁:添加物部会資料「令和5年度マーケットバスケット方式による保存料等の摂取量調査の結果について [PDF]」令和6年11月28日

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