ミネラルウォーター類の分類と市場の現状及び規格基準改正について

2018.06.08

2018年6月8日
一般財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
食品理化学検査部 技術専門科長 柴田 博

今年の夏は、記録的な猛暑が続き、暑さによる熱中症で救急搬送された人の数と、熱中症が原因とみられる死者数が過去最多を記録したと総務省消防庁が発表しました。

熱中症の対策としてこまめに水分を補給することが推奨されていることや清涼感のある飲料の需要が増加したことにより清涼飲料メーカー各社は、多種多様な飲料を開発し市場に供給していますが、とくにミネラルウォーター類はこの数年で出荷量が大幅に増加しました。

近年、安全・安心な水を求める消費者の意識の高まりや健康志向食の消費者が増加したこと。またカロリーがゼロで爽快感がある炭酸水が注目されたことから、スーパーやコンビニエンスストアでは様々なミネラルウォーター類を目にすることができます。

ミネラルウォーター類の分類

ミネラルウォーター類は、食品衛生法では水のみを原料とする清涼飲料水と規定され、二酸化炭素を注入したもの、カルシウム等を添加したものも含みます。ちなみにミネラルウォーター類に果汁や甘味料を加えた飲料は、ミネラルウォーター類ではなく清涼飲料水と表示されます。

また農林水産省のミネラルウォーター類の品質表示ガイドラインでは、採水した水の処理方法の違いにより、ミネラルウォーター類をナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、ミネラルウォーター、ボトルドウォーターの4つの品名に分類されます。(表1)

表1 ミネラルウォーター類の分類

ナチュラルウォーター 特定の水源から採水された地下水を原水とし、沈殿、濾過、加熱殺菌以外の物理的・化学的処理を行わないもの。(ミネラル分の溶解が少ない地下水)
ナチュラルミネラルウォーター ナチュラルウォーターのうち鉱化された地下水。地表から浸透し、地下を移動中又は地下に滞留中に地層中の無機塩類が溶解した地下水(天然の二酸化炭素が溶解し発泡性を有する地下水を含む)を原水としたもの。ミネラルウォーター類の約80%が該当。
ミネラルウォーター ナチュラルミネラルウォーターを原水とし、品質を安定させる目的等のためにミネラル調整、ばっ気、複数の水源から採水したナチュラルミネラルウォーターの混合等が行われているもの。
ボトルドウォーター ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター及びミネラルウォーター以外の飲料可能な水(水道水、蒸留水など)。

ミネラルウォーターの生産量と輸入量

ミネラルウォーター類の国内生産量は年々増加しており、2000年の国内生産量は約89万 KLに対し2017年は約325万 KLと3.6倍に増加しています。一方海外からの輸入量は2011年の東日本大震災の影響により増加しましたが、2012年には減少し2014年以降は横ばいの状態が続いています。(表2)

ミネラルウォーター類の輸入量を原産国別に見ると長年にわたってフランスからの輸入が最も多く2016年の輸入量も首位となっています。輸入飲料メーカーの販売戦略などにより近年は米国産が増加しフランス産の輸入量に迫っています。(表3)

清涼飲料水の規格基準の一部改正

平成30年7月13日付けでミネラルウォーター類の規格基準が改正されました。

改正の概要

清涼飲料水については水道法(昭和32年法律第177号)やコーデックス委員会等の国際基準との整合性を踏まえ、平成26年12月に規格基準の改正を行いましたが、当時、改正を行わなかった亜鉛、アンチモン、ヒ素、マンガン、亜硝酸性窒素、ホウ素、鉄及びカルシウム・マグネシウム等(硬度)について、今般、内閣府食品安全委員会から評価結果の答申があったことから規格基準の改正となりました。

改正の内容

1. 清涼飲料水の成分規格で規定する「ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行わないもの」の基準

2. 清涼飲料水の成分規格で規定する「ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行うもの」の基準

3. 清涼飲料水の製造基準で規定する「ミネラルウォーター類、冷凍果実飲料及び原料用果汁以外の清涼飲料水」の原料として用いる水のうち水道水でない場合の基準値

4 適用期日

告示日から適用されます。ただし、アンチモン、ヒ素、マンガン、亜硝酸性窒素及びホウ素については、公布の日から6か月以内に限り、従前の例によることができます。

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