2018.08.03
2018年8月3日
一般財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
理化学検査部 朝倉 敬行
スーパーやコンビニエンスストアなどで販売されているお菓子や清涼飲料水のパッケージには、熱量(カロリー)やたんぱく質、脂質の量が記載されています。こうしたパッケージへの表示は、消費者が商品を購入する際の一つのきっかけや決め手になります。
また、「血糖値の上昇を抑える」「内臓脂肪を減らす」などの商品を食べることで期待できる効能を記載した『機能性表示食品』の制度がスタートするなど健康志向の高まりに合わせ、栄養表示や健康を意識した機能性を有する食品を選択する人も多くいると思います。
今回、2016年4月の食品表示法の施行に伴い改正された栄養成分の表示に関する改正点を解説します。
食品表示法は、それまで各省が食品の表示に関して制定していた法律を一元化したものです。
具体的には厚生労働省の食品衛生法(一般食品の表示に関する法,昭和22 年法律第233 号),健康増進法(平成14 年法律第103 号)及び農林水産省の農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(昭和25 年法律第175 号,「JAS 法」)の3法に規定されていた表示に関する法律の整合性と一元化を行いました。
食品表示法は、栄養成分表示の義務化だけではなく、アレルギー表示の変更や機能性表示食品の制度の新設も合わせ行い消費者の選択の幅が広がりました。
食品表示法では原則としてすべての消費者向けの加工食品、食品添加物に栄養成分表示が義務化されました。
義務表示項目として、熱量(エネルギー)、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量(ナトリウムに2.54 を乗じて算出)、そして任意(推奨)表示項目として、飽和脂肪酸、食物繊維、任意(その他)表示項目として、糖類、糖質、コレステロール、ビタミン、ミネラル類があります。表示の一例を図1に示します。
栄養成分の表示方法が異なると消費者が自分の好みや必要なものを選択する際に迷ったり、誤ったりする恐れがあります。そこで、栄養成分に関する表示をする場合の記載項目名は「栄養成分表示」とし、「栄養成分量」や「栄養成分値」などの項目名は認められていません。
さらに、表示する成分の順序、単位、文字の大きさなども決められています。また、食品表示法の施行前は、鶏卵のみが表示対象であった生鮮食品についても、任意表示の対象となりました。
食品表示基準では原則としてすべての容器包装に入った一般用加工食品,添加物に栄養表示を義務付けています。ただし、ミネラルウォーターやお茶などは栄養の供給源としての程度が小さいことから栄養表示について免除となっています。
同様に、酒類や日替わり弁当、消費税法で消費税を納める義務が免除される小規模事業者が販売するものについても免除されることになっています。
栄養表示を行うための数値は、原材料の日本食品標準成分表を用いた計算値で得られた数値を表示しても構わないことになっています。
ただし、表示された数値と分析によって得られた栄養成分の値には、許容範囲が決められており、これを外れた場合は表示違反として処分の対象となります。食品表示基準施行後5年間(2021年3月31日)までに製造される商品には経過措置が適用され、栄養成分が未表示でも処分の対象とはなりません。
東京顕微鏡院では、食品表示法に基づいた表示義務の項目だけではなく、推奨項目、任意項目も試験を実施しております。