食品安全のための認証制度について

2016.06.01

2016年6月1日
一般財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
食品衛生サポート部 鳴島隆雄 向江環樹

はじめに

厚生労働省より、HACCP導入型基準が示されてから約1年が経過し、高度な衛生管理手法であるHACCPシステムへの関心が高まっています。

国内外には様々なHACCPの考え方を取り入れた衛生管理手法が存在しており、各企業は、その手法を取り入れ、第三者から承認を受けることで、対外的なアピールや、他国との取引の条件にもなっています。以下に農林水産省や厚生労働省の資料より認証制度について解説します。

1. 国内の認証制度

1)総合衛生管理製造過程承認制度

HACCPの概念を取り入れた衛生管理であり、厚生労働省が1995年に食品衛生法第13条1項に規定して開始した食品の安全管理における承認制度のことです。承認対象となる品目は「乳、乳製品」、「食肉製品」、「魚肉練り製品」、「清涼飲料水」、「レトルト食品」があり、現在495施設(718件)が承認取得しています。(平成28年3月末時点)

2)自治体HACCP

各自治体(都道府県、政令指定都市等)が食品関連事業者を対象に、HACCPの考え方を参考にして独自に基準を設け認証している制度です。現在、約20の自治体が実施しているが、自治体ごとに特徴があり、統一された基準はありません。

3)業界HACCP

一般社団法人大日本水産会、一般社団法人日本卵業協会などの業界団体がHACCPの概念を取り入れた業界独自の基準を設け認証している制度です。

4)大手小売業者によるHACCP

大手小売業者等が、HACCPの概念を取り入れた衛生管理基準を定め、取引先となる食品製造事業者に取引基準として要求するものです。

2. 国際社会の認証制度

1)対EU-HACCP

日本からEU向けに輸出する水産食品を対象に、厚生労働省(保健所等)や水産庁がEUの規制に適合していることを証明するものです。

2)対米国HACCP

日本から米国向けに輸出する水産食品、輸出肉を対象に、厚生労働省(保健所等)が米国の規制に適合していることを証明するものです。

3)GFSI(Global Food Safety Initiative)承認規格

GFSIとは2000年5月にグローバルに展開する食品事業者が集まり設立した非営利団体であり、乱立する食品安全認証システムの承認等を行っています。現在承認されているものはFSSC22000、SQF、BRC、IFS、Global GAP、GRMS、CANADAGAP、china HACCP等があります。

4)ISO22000

HACCPシステムの原則およびコーデックス委員会が示した7原則12手順をPDCAサイクルを通して継続的改善を図るマネジメントシステムの認証です。


これらの国際社会における認証制度は、全て海外の規格であり、日本の規格はありません。そのため、国際的に通用する規格の認証を求められた場合は、HACCPを含んだ海外の規格に沿った管理を行う。または、国際社会の認証制度の取得が求められることもあります。

HACCPを含む食品安全マネジメント認証規格

認証規格 日本の国内取引で使われているもの ③国際取引で使われているもの
①(一部地域) ②(全国)
海外の認証規格
〈規制〉
EU-HACCP
米国HACCP
〈民間認証〉
ISO22000
GFSI承認規格
FSSC22000
SQF、BRC等
日本の認証規格 品目横断的・統一的な規格がない 現在なし
自治体HACCP 等 総合衛生管理製造過程承認制度
業界HACCP 等

農林水産省 食料産業局食品製造課 食品企業行動室:「食品安全管理の規格・認証規格をめぐる状況」(2015年10月)PDFより引用

3.世界の食品取引と我が国の現状

食品事業のグローバル化により、食品安全が世界共通の課題となっているなか、米国、EU、カナダ、オーストラリア、韓国、台湾では、HACCP制度が順次義務化されています。

欧米におけるHACCP規制状況

米国 1997年 水産物、畜産物等特定の品目に義務化
2016年施行 食品安全強化法(FSMA)の施行により「HACCPの概念を取り入れた計画の策定と実施」が義務化される
EU 2006年施行 EC規制852/2004の施行により、既にHACCPが義務化されている

日本の食料自給率は、約4割に留まっており、輸入食品の安全性確保は非常に重要な課題となっています。輸出国に対してHACCPによる衛生管理を求めていくためには、内外無差別の観点から国内でのHACCP導入が前提になります。(輸入品に対して科学的な根拠なく自国の規制よりも厳しい規制は適用できません。)また、輸出や海外への事業展開を行うにあたり、国際的に通用する規格の認証を求められた場合に、HACCPを含んだ海外の規格を使わざるを得ないのが現状です。

このように、HACCPは世界的に普及が進展していますが、日本での普及率は低いのが現状です。

HACCP導入型基準の導入、日本初の食品安全マネジメント規格・認証規格構築を目指した一般財団法人食品安全マネジメント協会の設立など、国際標準に対応した管理および規則の構築が進んでいます。

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