2022.03.14
2022年3月14日
一般財団法人東京顕微鏡院
簡易専用水道検査部
担当係長 髙橋 悟
マンション、オフィスビル、学校、病院などの建物や、大量の水を必要とする工場などでは、受水槽と呼ばれるタンクにいったん水道水をため、ポンプで水圧をかけてから各戸に給水する方法や、ビルの屋上に設置してある高置水槽にポンプでくみ上げてから各階に給水する仕組みを取っています。 これらの給水設備の維持管理が適切に行われていないと、思わぬ水質汚染事故が発生してしまうことがあります。
簡易専用水道検査は、マンションやビルの利用者が安心して安全な水を飲むことができるように、専門の検査員が施設の状態や管理の状況、給水栓の水の検査などを実施します。
簡易専用水道検査は、水道法に基づく法定検査で、受水槽の有効容量が10㎥を超える施設は毎年1回以上定期的に、厚生労働大臣の登録を受けた検査機関で検査を受けることが義務づけられています。
簡易専用水道検査の検査項目とその判定基準は、水道法や関連法規で定められていますが、大きく分けて次の⑴~⑶になります。
⑴ 「簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査」
→ 受水槽や高置水槽などの給水設備の状態をチェックします。
⑵ 「給水栓における水質の検査」
→ 水の臭気や味、色、色度、濁度、残留塩素などをチェックします。
⑶ 「書類の整理等に関する検査」
→ 給水関係の図面、貯水槽清掃報告書、その他の帳簿書類などをチェックします。
「簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査」でよくみられる不適事例を紹介します。
水槽周囲の状態
槽周囲の樹木の枝が繁茂している。
(落葉や木に集まる昆虫や蜘蛛などの生物によって水槽周りが不衛生になる。)
水槽上部の状態
水槽上部に落葉が堆積している。
水槽上部の状態
槽水槽上部に砂埃が堆積している。
水槽内部の状態
水槽内部のボルトが錆び付いている。
(ボルトの腐食により、破損による金属片の落下や、錆汁で槽壁を汚す原因になる。また、場合によってはタンクの強度の低下にもつながる。)
マンホールの状態
マンホールが施錠されていない。
防水密閉用のパッキンが劣化し破損している。
防水密閉用パッキンの固定不良。
オーバーフロー管の状態
防虫網が破損している。
通気管の状態
防虫網が破損している。
網目がスリット状になっているため、虫等が侵入する可能性がある。
東京顕微鏡院では、毎年9,000件近い施設の簡易専用水道検査を行っていますが、最も不適が多いのは書類の整理等に関する項目です。
これは、水質汚染事故防止のために施設の設置者や管理者が自ら実施する、残留塩素の測定や水の外観状況(色、臭気、味、濁り)の確認、定期的な給水設備の点検などの自主点検記録の整理保存状況をチェックする検査で、この項目の不適が多いということは、日常的に適正な管理が実施されていない施設が多くあることを示しています。
また、施設およびその管理の状態に関する項目では、水槽内部の状態、マンホールの状態、通気管の状態などで不適が多く見られました。
簡易専用水道を設置または管理しておられる皆様には、貯水槽の水を利用する全ての方々に、より安全で安心な飲料水を届けるために、不適事項の改善を含め、施設の適切な維持・管理の実施をお願いいたします。
また、われわれ簡易専用水道検査員も、知識と技術の向上に努め、精度の高い検査を実施することにより、安全な飲料水の確保に寄与していきたいと考えております。