2018.04.11
2018年4月11日
一般財団法人東京顕微鏡院
検査事業本部長 宮田昌弘
防かび剤(防ばい剤)とは、オレンジやレモンなどの「柑橘類」、バナナ、ブドウなどの「果物類」に付着した“かび”の繁殖を防ぐために使用します。特に輸入食品は船舶等での長期間の輸送に備えるため使用が顕著です。
防かび剤は柑橘類、果物類の収穫後に使用し、腐敗、変質防止を目的としているため、食品衛生法では「農薬」でなく、「食品添加物」として使用が認められています。
一方、「農薬」とは殺虫剤や殺菌剤など、農作物に被害を与える生物などを防除するため収穫前に使用する薬剤のことです。一般的に「食品添加物」に比べ「農薬」は毒性がはげしく、食品衛生法の残留基準も厳しく制限されています。
防かび剤は、古くは昭和46年にジフェニルが、続いて昭和52~53年にオルトフェニルフェノールとそのナトリウム塩やチアベンダゾールが食品添加物として認められました。このように、50年近くにわたり使用を続けたためか、最近、これらの防かび剤を高濃度で使用しても薬効がない、すなわち“かび”が発生してしまう事例があるようです。これは、薬剤に対する耐性菌が選択されたとの報告があります*1)。また、“かび”の種類も多岐にわたるため、単独の薬剤では十分な防除効果がなくなりつつあることが伺えます。
食品衛生法においても法改正があり、今まで農薬として登録していた薬剤を食品添加物として使用することを許可しています。具体的には平成23年にフルジオキソニルが「柑橘類」に限らず「キウイ」や「もも」などに、平成25年にアゾキシストロビンが「柑橘類」に、ピリメタニルが「もも」や「りんご」に食品添加物としての使用が認められました。現在、プロピコナゾールが「柑橘類」や「おうとう」などに食品添加物として使用できるよう薬事・食品衛生審議会で審議中です。
食品衛生法おける使用基準は表1のとおりです。
薬剤の複数使用の1例として緑かび病に対する使用例があります。緑かび病にはプロピコナゾールが防除の目的として有用ですが、イマザリル耐性菌に対してはプロピコナゾール単独では十分な防除効果が得られず、フルジオキソニルを混用することにより、防除効果があるようです*1)。このように、防かび剤は単品でなく複数で使用することが増えているようです。輸入者、販売者は、これらを踏まえた防かび剤の適正な管理が必要です。
我が国に輸入される柑橘類、果物類はバナナが圧倒的に多く、続いて、「パイナップル」、「オレンジ」、「キウイ」と続きます。「アボカド」、「キウイ」、「ブドウ」は輸入量が増加傾向ですが、「バナナ」、「柑橘類」は横ばいです。
主な果物の輸入量を表2に示します。
*1)平成29年10月6日薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会
*2) 薬事・食品衛生審議会で審議中