地下水(PFOS, PFOA等分析)

水道法に基づく水質管理目標設定項目 有機フッ素化合物(PFOS、PFOA)検査

近年、水質管理上健康に影響が懸念されると注目されている物質として、有機フッ素化合物であるパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びパーフルオロオクタン酸(PFOA)が挙げられている。PFOSは、化学構造上すべての水素がフッ素(F)に置換された直鎖アルキル基を有するスルホン酸で、PFOAは同様の構造を有するカルボン酸である。(図1、2)

PFOAの構造式
PFOSの構造式

有機フッ素化合物には非常に多くの種類があり、耐熱性や耐薬品性、耐水性、耐油性、耐火性に優れているため、フライパンの表面加工やフッ素樹脂製造時の乳化剤、繊維用撥水剤、泡消火剤、航空機用作動油など幅広い用途に使われている。難分解性、生物への蓄積性などの性質を持ち、環境中に長い間残存することが知られており、2000年代はじめ、野生動物やヒト、環境中に広く存在していることが報告された。また、野生生物やヒトの血液中からも検出され問題とされている。

PFOSとその塩及びPFOAは2009年に「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」*1)の対象物質として、製造・使用、輸出入の制限あるいは原則禁止された。国内ではPFOSが、2010年に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」の第一種特定化学物質に指定され、製造・輸入・使用が禁止となった。PFOAはラットにおいて腫瘍発生の誘因とされ、国際がん研究機関(IARC)は2023年、限られたエビデンスであるが精巣及び腎臓がんに関連あるとして、グループ1「ヒトに対して発がん性がある」に分類している。

なお、米国では2021年4月、サンドイッチ、ハンバーガー食品の携帯容器、包み紙に含まれている調査結果から、ワシントン州、カリフォルニア州サンフランシスコ市では食品容器への有機フッ素化合物の使用を制限する方針を示した。2019年9月にはデンマークで食品包装への有機フッ素化合物の使用を禁止している。

水道水中の有機フッ素化合物の規制

厚生労働省は、2020年4月、有機フッ素化合物のPFOS、PFOAを水質基準の要検討項目から水質管理目標設定項目として位置づけ、暫定目標値をPFOS及びPFOAの合算値として50ng/L*2)とした。

農林水産省は、優先的にリスク管理を行うべき有害化学物質のリストに両物質を載せた(2010-2016年)。環境省は、2020年5月健康影響等の情報や公共用水域における検出状況等から、両物質を要監視項目として指針値(暫定)を合算値として50ng/Lと設定した。

PFOS及びPFOAについては、水道水質に関する規制や基準を設定する上で目標とされる世界保健機関(WHO)が基準値を設けた。一部の国で食品などほかの経路から摂取することも勘案して目標値等を設定しているものの、安全性に関する評価が定まっていないことから、その値は各国で異なっている。 米国は2016年に、PFOS、PFOAの合算値として70ng/Lとしていたが、2024年4月にPFOSとPFOAの規制値をそれぞれ4ng/Lと定めた。

水道水中の有機フッ素化合物に関する各国の目標値等を表に示した。(表1)

表1 水道水中の有機フッ素化合物に関する各国の目標値等

国等 PFOS PFOA
WHO 100 ng/L 100 ng/L
日本 合算で 50 ng/L
米国 (規制値) 4 ng/L 4 ng/L
英国 100 ng/L 100 ng/L
ドイツ 100 ng/L 100 ng/L

*1)残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約:
Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants
1995年、約100か国の代表が参加した政府間会合で採択された「ワシントン宣言」の中で、残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants:POPs)の規制に向けて行動することが定められた。さらに、2001年5月、ストックホルムで行われた外交会議において、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」が採択された。毒性が強く、残留性、生物蓄積性などを有する残留性有機汚染物質から人の健康と環境を保護することを目的とし、それらの製造・使用、輸出入の禁止・廃棄等の適正管理を求めている。

*2)ng/Lとは、水1リットルあたり10億分の1グラムの物質が溶解していることを表す。

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