2021.07.15
財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
食品理化学検査部 柴田 博
皆さんがご自宅で食器として使っている陶磁器やクリスタルガラス、ホウロウ引き製品に対して、安全性を守るための検査が行われていることはご存知でしょうか。
陶磁器、ホウロウ引き製品を着色するために使われる釉薬や顔料には、金属が含まれています。また、クリスタルガラスには、輝きを増すために鉛が加えられているのです。
食品と接触する内面に着色や絵付けがあり、上から釉薬がかけられていない、または焼成温度が低い陶器、そしてクリスタルガラスや金色の縁取りなどが付いたガラス製品からは、カドミウムや鉛などの金属類が溶出することがあります。
食品と接触して使用される器具・容器の安全性を確保するために、食品衛生法ではガラス、陶磁器、ホウロウ引き製品のカドミウムおよび鉛の溶出値について規格基準を定めています。
検査は、食品と接触する部分を4%酢酸水溶液で24時間満たし、その溶液を分析機器により測定します。
平成20年7月にガラス、陶磁器、ホウロウ引きの器具または容器の規格基準が改正され、カドミウム、鉛の溶出限度値が引き下げられて、基準がより厳しくなりました。また、オーブンや直火で使用するものは「加熱調理用器具」として検査区分が新たに設定されるなど、材質、使用方法に合わせて細かく検査が行われるようになりました。
以上のように、食品が触れることによって食品に移行した有害物質を摂取することがないよう、食器にも検査が義務付けられているのです。食品衛生法に定められている「食品」という言葉は幅広く解釈されており、より総合的に食の安全が守られています。
当科学センターでも、安全で安心な食品を守るため、様々な検査を行っています。
詳細はこちらをご覧ください。
参考資料 :器具・容器包装の規格基準とその試験法(2006年3月改正対応版、河村葉子著、中央法規出版)